ドキュメンタリーはまだまだ勉強中ですが、たまに出会う良作ドキュメンタリーは観た後も続く余韻に唸らされることがしばしば。
本作「14歳の栞」は、とある中学校の2年6組の三学期に密着したもの。
この映画、これといって何か起きるわけではありません。
あくまでドキュメンタリーなので、ストーリーも何もありません。まあ当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。
ですが、観る人全員の“あの頃”を思い出させる至高のエモドキュメンタリーとして、思春期を経験したオトナたちに是非観てもらいたい一本です。
映画「14歳の栞」あらすじ
とある中学校の3学期、「2年6組」35人全員に密着し、ひとりひとりの物語を紐解いていく。
そこには、劇的な主人公もいなければ、大きなどんでん返しもありません。それなのになぜか目が離せないのは、きっとそれが「誰もが通ってきたのに、まだ誰も見たことのなかった景色」だから。そしてその35人全員が、どこか自分と重なってしまうからかもしれません。まだ子供か大人かも曖昧なその瞬間、私たちは、何に傷ついて、何に悩んで、何を後悔して、何を夢見て、何を決意して、そして、何に心がときめいていたのか。これは、私たちが一度立ち止まり、いつでもあの頃の気持ちに立ち返るための「栞」をはさむ映画です。
公式HPより
映画「14歳の栞」スタッフ
- 監督:竹林亮
- 企画・プロデュース:栗林和明
- 制作指揮:島田研一、上藤和興
映画「14歳の栞」ネタバレなし感想
この映画のすごいところは、クラス35人全員に密着しているところ。
クラスのお調子者から、部活に精を出す子、休み時間は机に突っ伏して寝ている子、ちょっと男子ぃ!みたいな女子。さまざまです。
というか、中学校のクラスってほんとこういう感じでしたよね。自分だったらどの辺の立ち位置かなとか、この子とは仲良くなれそうだなとか想像しながら観るのも面白い。
本作はドキュメンタリーとして、そのコンセプトにもなっている最大の魅力があります。
なにもかも“途中”である中学生たち
あらすじにもある通り、この映画で密着されるのは2年生の三学期。
普通こういう映画だったら、3年生に密着して最後は卒業を迎えてそれぞれの道へ…みたいなオチが想像できますよね。というか作りやすそう。
しかしこの映画で密着するのはあくまで2年生。
卒業なんて一年先だし、進学先どうするかとか部活もいよいよ自分たちがメインで、みたいな話がようやく出てきた頃。
映画に映る彼ら彼女らは、めちゃくちゃ途中なんですよね。
環境的に“途中”であるだけでなく、人間としても子供から大人へ成長していく過渡期真っ只中。その成長過程の一部を覗き込むような映画体験には、商業映画などでは味わえないリアルなエモさが溢れています。
「14歳の栞」というタイトルも、全てが途中である彼らを捉えた秀逸なタイトルではないでしょうか。
こちらが心配になる程“リアル”
全員に密着というのも、合間に一人一人へのインタビューがあったり自宅での様子が映されたり、友達同士でプリクラ撮りに行くのについて行ったり…と結構ちゃんと密着しています。
というか「こんなん使われちゃっていいの!?」ていうところまで喋ったり、映されたりしています。本人了承済みなんでしょうけど、観ている側が心配になる程赤裸々です。
「○○さんとLINEしている時が1番楽しい」と素直に答える男子、「あいつあんま好きじゃない」と語る女子、不登校でなかなかクラスに馴染めていない子もインタビューされますし、「あの子が不登校になった原因は僕かもしれない…」と人知れず悩みを抱える生徒も心情がそのままに語られます。
そういった中学生のありのままの姿を映した本作は、観ていて恥ずかしくなるほど“こじれて”いて、頭を抱えるほどエモく、同時に等身大の痛みが同居している他の映画では味わえない不思議な魅力を持った素晴らしい作品だと感じます。
この映画を観て、自分の中学時代と重ねずにいられる人はいるんでしょうか…
このリアルさもドキュメンタリーである本作の説得力を増大させ、観る側を惹きつける大きな要素の一つです。
まとめ
この映画を観た後はなんとも言えないエモさに包まれることでしょう。
バレンタインデーからのホワイトデーを映したところなんて、まじでエモすぎて文字通り頭抱えました。エモの凶器です。
ですが本作は、そういった「甘酸っぱい青春物語」だけにフォーカスすることなく、生徒一人一人の人間性や彼らの抱える問題や悩みに真っすぐに向きあっているんです。
この作品を商業的な面白さを追求したものにすることなく、生徒一人一人に向き合った姿勢に制作側の誠実さを感じます。
“あの頃”を経験した全ての人はもちろん、思春期の子供を持つ親世代にも是非観て欲しい一本です。気難しい思春期の子供たちの生態がより理解できるのではないでしょうか。
僕ももう少し大人になった後、定期的に見返していきたい一本。
なかなか観る手段の少ない映画ですが、チャンスがあったら迷わず観て欲しい!
そんな良作ドキュメンタリーの体を成したインスタントタイムマシン。おすすめですよ。
以上!
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