近頃はミュージカルや、音楽映画が結構な盛り上がりを見せています。
その作品の中には結構当たりが多くて、「ラ・ラ・ランド」なんかは個人的に大好きですし、「はじまりのうた」「シング・ストリート」を手がけ、音楽を絡めた人間ドラマを得意とするジョン・カーニー監督の作品はハズレがない印象です。
そんな中でも抜群のクオリティで頭一つ抜ける存在感を示したのが、2021年アカデミー賞作品賞を受賞した「Coda コーダ/あいのうた」でした。
エミリア・ジョーンズの歌声に痺れる快作、ネタバレなし感想です!!
映画「Coda コーダ/あいのうた」あらすじ
豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める…
公式HPより
映画「Coda コーダ/あいのうた」キャスト・スタッフ
- 監督:シアン・ヘダー
- エミリア・ジョーンズ(ルビー・ロッシ)
- トロイ・コッツァー(フランク・ロッシ)
- マーリー・マトリン(ジャッキー・ロッシ)
- ダニエル・デュラント(レオ・ロッシ)
- フェルディア=ウォルシュ・ピーロ(マイルズ)
映画「Coda コーダ/あいのうた」ネタバレなし感想
聴覚障害者の家庭で生まれ育った唯一の健聴者・ルビーは、家族には決して理解してもらえない素晴らしい歌声を持つ少女だった…
というプロットがまず興味をそそりますよね。初めて予告を観た時、一瞬で観たくなったのを覚えています。
あらすじから心掴まれますが、実は本作は2014年のフランス映画「エール!」という映画のリメイク作品。
物語の設定が「エール!」から本作で大きく変わったところといえば以下の通り
- 弟 → 兄
- 農家一家 → 漁師一家
- 俳優は健聴者 → 実際に聴覚障害のある俳優を起用
ちなみに肝心のストーリーはほとんど一緒で、途中で出てくるジョークや話の展開までほぼ一緒。ある意味素材の味を生かしたリメイク作品となっています。
が、正直ほとんどの部分で「エール!」を上回る非常に優秀なリメイク作品に仕上がっていました。
歌がうめぇ。
あの、まずほんとシンプルに歌がうめぇんです。まじで。
予告で主演のエミリア・ジョーンズが歌うシーンを観た時はちょっと鳥肌が立ちました。
「エール!」で主演してた女の子ももちろん上手かったんですが、エミリア・ジョーンズは少しレベルが違うように感じました。
シンプルな歌のうまさで言ったら多分一緒くらいなんですけど、エミリア・ジョーンズはホント心を掴まれる歌声というか、内に秘めた底力が乗っかったパワフルだけど華やかで繊細な歌声なんですよね。
彼女の歌声だけでこの映画の採点が甘くなるような、本当にすごい魅力を持った女優さんだなと、それだけで感動してしまいました。
俳優陣の層の厚さ
しかし、この映画で素晴らしい演技をするのは主演のエミリア・ジョーンズだけではありません。
脇を固める俳優陣の面々がかなり魅力的なんです。層が厚すぎる。
実際に聴覚に障害を持ち、本作では言葉で語る以上の演技を見せたロッシ家の面々も、本当の家族かと思うほど調和が取れていて、根底には温かさがある素晴らしいキャラクターを演じあげていました。
この家族の存在こそ、この映画の重要なポイントでもあり最大の魅力とも言えるのではないでしょうか。
お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、みんなキャラクター造形が本当にイイんです。思春期の娘からしたらムカつくことばっかだけど、どこか憎めないしなんだかんだ愛らしい…みたいなすごく絶妙なラインの演技がガチッとハマっていて、この家族の日常ミニシリーズを1話30分でやってほしいくらいには見ていて楽しい家族です。
ルビーと両親がとある事で病院へ行くシーンがあるんですが、本当にめちゃくちゃ笑いました。本作で一番のコメディシーンです。
ルビーの家族以外にも、ルビーに情熱と厳愛を持って向き合う音楽教師・ミスターVや、映画「シング・ストリート」で主演を務めたフェルディア=ウォルシュ・ピーロくんも存在感が抜群で作品のクオリティを底上げするような素晴らしい脇の固め方。
主演のエミリア・ジョーンズを含め、俳優陣の放つ魅力と層の厚さこそが、この作品を「エール!」から数段アップグレードさせた一番の要因であると感じます。
終盤は落涙必至
物語は終盤になるにつれて、ルビーの巣立ちとロッシ家の将来に焦点が当たっていきます。
家族と離れるけど音楽大学に進みたいルビーと“通訳”として家業を支えてほしい家族。
それぞれが葛藤や不安を抱えながらルビーやロッシ家の将来に向き合い、一つの“答え”を出していくんですが、この辺はもうホント涙なしには観れません。
クライマックスにはお父さんが主体となる、とある場面が映されます。こちらは文句なしに映画史に残る素晴らしいシークエンスであると感じました。観客を彼らの視点に立たせ、ロッシ家の心情とシンクロさせたシアン・ヘダー監督の手腕と演じたトロイ・コッツァーの表現力に、観る人は心を奪われるはず。
まとめ
冒頭でも述べたように、本作は2021年のアカデミー賞作品賞を受賞。Netflix作品「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が大本命と囁かれる中で、サプライズとなる受賞でした。
他にもお父さん役を演じたトロイ・コッツァーが助演男優賞、シアン・ヘダー監督が脚色賞を受賞するなど、作品として最大限に評価された一本です。
ちなみに、本国ではAppleが配給権を買い取ったことから劇場公開は少なく基本的にApple TVでの配信がメインだったよう。
日本では配給会社のGAGAが猛烈な熱意で配給権を買い取ってくれたので、映画館でこの作品を楽しむことができたわけです。ありがとうGAGA。
というかそもそも配信作品が作品賞を獲る最初の事例となったわけで、めちゃくちゃ快挙なんですよね。
僕もすごく好きな作品だったので、ファンとしては受賞は非常に嬉しいニュースでした。(パワー・オブ・ザ・ドッグが作品賞獲ると思ってたけど。)
ともあれ「Coda コーダ/あいのうた」はデートムービーにもよし、家で家族とゆっくり観るもよし、しんみり一人で泣きたい時に観るもよしな、隙のない大変素晴らしい作品です。
観終わった後はあなたも「I love you」をしたくなるはず。
めちゃくちゃおすすめです!!
以上!!
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