20センチュリー・ウーマン、人生はビギナーズを手がけたマイク・ミルズ監督による最新作。
主演するのは、JOKER/ジョーカーでの怪演が記憶に新しいホアキン・フェニックス。
2人がタッグを組んで挑んだのは、不器用だけど真っ直ぐな、伯父と甥っ子の数日間を描くヒューマンドラマでした。
そして本作、なんとバラク・オバマ元大統領が2021年のベストムービーにも掲げた一本!
期待が高まります。
ということで、映画「カモン カモン」ネタバレなし感想です!!
映画「カモン カモン」あらすじ
NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニーは、妹から頼まれ、9歳の甥・ジェシーの面倒を数日間みることに。LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが…
公式HPより
映画「カモン カモン」キャスト・スタッフ
- 監督:マイク・ミルズ
- ホアキン・フェニックス(ジョニー)
- ウッディ・ノーマン(ジェシー)
- ギャビー・ホフマン(ヴィヴ)
- モリー・ウェブスター(ロクサーヌ)
- ジャブーキー・ヤング=ホワイト(ファーン)
映画「カモン カモン」感想(ネタバレなし)
マイク・ミルズらしい穏やかで優しい雰囲気が終始漂うヒューマンドラマ。
マイク・ミルズはパーソナルな経験を存分に活かして映画を作っていくスタイルがお決まりで、20センチュリー・ウーマンでは自身と母親との関係から物語を描き、老年期にゲイを告白した父親との関係を描いた人生はビギナーズではまさしく自分の父親との関係性作品に反映させています。
そして本作「カモン カモン」ではどうかというと、もちろん伯父である自分と甥っ子の関係…ではなく、自分の息子の子育てからインスパイアされて製作まで至ったそう。
息子をお風呂に入れているその瞬間が、この物語が生まれた出発点だったと。本作にもジェシーをお風呂に入れるシーンがありますが、なんか素敵ですよね。
とはいうものの、子育てはもちろん全てが思い通りにいくわけではなくまさしく想定外の連続です。本作でも描かれていたように、どこか無意識的に子供を“コントロール”しようとしてしまう、親心こそ本作を作るきっかけになったのではないでしょうか。
ホアキン演じるジョニーの職業はラジオジャーナリスト。子供達へのインタビューを録音しメディアとして世の中へ発信します。
「スーパーパワーがあったらなにがしたい?」
「もし自分の両親を子育てするとしたら何て教える?」
そんな質問を、アメリカに住む多様な子供たちへ投げかけるんですが、返ってくる子供達の答えがまたすごく大人というかよく考えているというか…
恐らくどの子も裕福ではなかったり、移民として自分のアイデンティティに悩んでいたり、一人一人が苦労しながら生活しているであろう子供たちなんですが、そういった環境もあってか考え方や捉え方が本当に成熟しているんですよね。
まずはそこに胸が打たれました。
裕福で恵まれていることそれ自体は勿論素晴らしいことですが、苦労が人間を形成していくと考えると、裕福=本当の幸福かというのはとても図りきれないないなと見ながら考えたり…。
本作でのインタビューシーンは、ホアキンが実際に子供達に投げかけながら撮影した“生の声”。ドキュメンタリーも手がけた経験のあるマイク・ミルズならではの手法です。
その辺も踏まえながら観るとまた味わいが違います。
それぞれが抱える痛み
ジョニーとヴィヴの兄妹は数年前に母親を亡くしたばかりで、ジョニーはどうやら寄り添ったパートナーとの別れも経験した様子。ヴィヴも母親との死別に加え、旦那であるポールは精神を病み別居状態で、病院に行くことすら拒否してしまう。ジェシーは好きだった父親とも離れて暮らさないといけなくて寂しいし、お母さんも最近なんだか疲れ気味。お母さんがいない間伯父さんに面倒見てもらうけど不器用だし、やっぱりお母さんが良い。
本作の中心となる三人はみんなそれぞれが傷を抱えていて、それにどう向き合えば良いのかも手探りな状態。
なんですけど、3人とも不器用ながら前に進み、時にはお互い助け合うんですよね。
ヴィヴはジョニーに対し息子との向き合い方を根気良くサポートするし、ジョニーは夫のケアで疲弊している妹を気遣い、不器用だけどジェシーに対して体当たりでぶつかっていく。
ジェシーだってわがままで手に負えない時もあるけどだけど、素直に2人に向き合おうとして「ごめんなさい」だってちゃんと言える。大事ですよね。
そういう等身大の優しさと不器用さが同居している、なんとも愛おしい映画なんです。
でも実は…
素敵な映画であることは間違いないんですが、
僕自身実はマイク・ミルズとの相性があまり良くありません
20センチュリー・ウーマンも人生はビギナーズも、「まあなんとなく良いのはわかるけど、合わないな…」って感じでした。
本作も「評価されるのはめっちゃわかるけど、個人的に好きかと言われると否」という感じ。
マイク・ミルズの映画はストーリーがあるようであんまりなくて、物語自体は割と薄味なんですよね。だからこそ人間ドラマの味わいが出てくるのは百も承知なんですが、僕の教養が浅いこともあり、なかなか好きになりきれない作風です。
まあでもこれは「合わない」というだけであって決して「つまらない」ではないということは声を大にして言いたい!普通に全然おすすめできます!!します!!
まとめ
とまあ色々書きましたが、個人的好みを抜きにすればめちゃくちゃ良質な一本だと思います。
終盤のジョニーとジェシーがお互いに胸の内をぶつけ合うシーンなんかはかなり好きなシーン。
2人の真っ直ぐさと等身大な感じが出ていてめちゃくちゃ好きです。
終始モノクロで紡がれる人間模様は不恰好でカッコ良いもんじゃないけど、胸の内で大切にしたくなるような、人間愛に溢れた一本でした。
ぜひ劇場で!!
以上!
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